春の夕暮れ。大地に腹這うと、不思議な温もりが伝わってくる。
枯草の根本から、かすかな体臭が立ち昇る。
潤み始めた肌を突いて出てきた新芽ひとつ。やがて丘を、野を埋めつくして、いのちの昴まりを謳うだろう。
大地は静かな王者だ。
その熱い胸板に無数の生の鼓動を刻む、やさしくも靭い王者だ。
















日光の長として  斎藤 善蔵
 この度の足立博文氏の写真集発刊にあたり、作って呉れたか・・・やって呉れたか・・・。という感慨しきりである。彼とは30年来の既知でもあり、また遠縁でもある関係から、種々お付合いを重ねてきている。昔はなかなかのスポーツマンであったが、そのストレートな物言い、情勢分析の密なることは、持って生まれたもののようだ。
 季節毎に、日々刻々と変る日光の風物は、この大地で生活をしている者でなければ、味わえないのではないだろうか。しかし、あまりに慣れ過ぎて、その美しさを見逃している向きも無いとは言えない。

 足立氏の写真に対する情熱は、恵まれた職務上の環境と、さらに、シャッターチャンスを逃さない審美眼とが相俟って、度々のコンクールでの受賞となっている。
 30年間撮り続けてきた日々のなかには、他人に語れない挫折や、失望、そして喜びがあったことと思うが、それが今、集大成されようとしていることに、いろいろな意味から、大きな拍手を送りたい。そして、これを基点にさらに情熱を燃やし、精進を続けて、故郷の美しさを撮り、より多くの人の眼を日光の再発見に向けてもらいたい。
 足立氏の故郷である日光の長として、その成果に感謝するとともに、共鳴多かれと祈りたい。
                                           (さいとう ぜんぞう  日光市市長)