冬の朝。晴れ渡った空に、風が立ちあがった。
 裸木はいっせいに乾いた悲鳴をあげ、雪の原は白い花粉を豪勢に
ふり撒いた。
 凍てかけた湖面に亀裂が走る。
 翼を持った詩神となって、風は天と地を翔けめぐる。
 詩え、もっと高らかに。
 お前の言葉は、激しい沈黙の譜を綴る。













 美の旋律が  緑川 洋一
私が初めて足立君に出合ったのは、既に20年近い昔のように思う。明智平の雑木林の中に、緑の芽ぶきに先がけて、ピンクの大きな花が咲いていた。"やしお"です、と自慢げにおしえてくれた。この花が終わると紫やしおが湖畔に咲きます、と。見渡せば、中禅寺湖は満々と紺碧の水をたたえ、華厳瀑布は大谷川へ滔々と水を落としていた。以来毎年お目に掛る仲となった。
 私自身、北は北海道から南は沖縄にいたる、日本列島の春夏秋冬を写し、また遠く諸外国の国立公園も撮影しているのであるが、日光ほど自然の移ろいが、はっきりときわだつところは無い。冬の湖畔は氷雪に閉ざされ、戦場が原は雪煙が舞う。春を迎えれば、やしお、きすげの花が咲き乱れ、夏は緑なす山々。錦秋は色の饗宴。そして男体山と中禅寺湖は日光のシンボル。加うるに輪王寺、東照宮の霊地。すばらしきかな日光。
 足立君の父上は音楽家であったと聞く。諸国巡歴の後、日光の美しい風土に魅せられ、ここを永住の地になさったとか、うべなるかな。
 この父上の血を引いたのであろうか。足立君の作品は、ただ単なる風景の引き写しではなく、そこにはすばらしい美の旋律がある。こまやかな愛情の発露からなる美しい叙情詩である。長年にわたって写しつづけてきたその作品群が、ここに一冊にまとまることになって誠に喜ばしい。
 やがて、『東国の聖地”日光”足立廣文写真集』は、わが国の貴重なる文化財になって、末永く保存されることであろう。
                                                                  (みどりかわ  よういち  写真家)